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結論 — 夏は麦茶のボトルが冷蔵庫に戻る日から始まる
私の家では、夏はカレンダーの日付ではなく、冷蔵庫のドアポケットに麦茶のボトルが戻ってくる日から始まる。今年は5月31日だった。気温が何度を超えたとか、梅雨入りがいつだとか、そういう外側の指標より先に、台所の手が勝手に動く。沸かして、冷まして、入れる。この三つの動作で、季節がひとつ進む。
ボトルといっても大層なものではない。無印良品の冷水筒で、容量は2リットル、もう何年使っているか覚えていない。冬のあいだは戸棚の奥で乾いて眠っていたそれを、ある日ふと取り出して洗う。その瞬間が、私にとっての夏の開始ボタンだ。
やかんで沸かして、冷ましてから入れる
麦茶は沸かしてから入れる。これは効率の問題ではなく、ほとんど手の記憶でそうしている。やかんに水を張り、麦茶のパックを一つ落とし、火にかける。沸いたら火を止めて、しばらく置く。粗熱が取れたら冷水筒に移し、冷蔵庫へ。所要時間で言えば、水出しのパックを放り込むほうがずっと早い。
それでも沸かすのは、たぶん子どもの頃に台所で見ていた風景がそのまま手に残っているからだ。やかんの注ぎ口から立ちのぼる湯気と、麦の香ばしい匂い。あの匂いがしないと、夏が始まった気がしない。理屈ではなく、鼻と手が先に夏を覚えている。
一度だけ、沸かしたてを熱いまま冷水筒に注いで失敗したことがある。プラスチックの側面がわずかに白く曇って、冷蔵庫の中まで結露でしっとりした。それ以来、私は必ず鍋肌が手で触れる温度まで待つ。急ぐと、たいてい良いことがない。
台所の小さな合図
季節の変わり目は、空や気温より先に台所に現れる。少なくとも私の家ではそうだ。麦茶のボトルが戻る前から、その予兆は小さく積み重なっている。
冷蔵庫を開けたとき、奥のほうに冷たい飲み物が欲しくなる。コップに氷を入れる回数が増える。味噌汁より先に、冷たいものに手が伸びる日が出てくる。そういう小さな変化が三つか四つ重なったあたりで、私は冷水筒を洗い始める。誰かに言われるわけでもなく、毎年だいたい同じ頃に。
窓を開けている時間が少しずつ延びていくのを別の随筆で書いたことがあるけれど、麦茶も同じだと思う。境目はくっきりした線ではなく、いくつもの小さな合図がゆっくり重なって、気づいたら向こう側にいる。
なぜペットボトルではなく沸かすのか
ペットボトルの麦茶を買えば済む。それでも沸かすのは、味の問題が半分、儀式の問題が半分だ。買ってきた麦茶も悪くないが、家で沸かしたものは香ばしさの角が少し違う。気のせいかもしれない。けれど、その気のせいのために毎年やかんを火にかけている。
麦茶がカフェインを含まないのは、原料が茶葉ではなく大麦という穀物だからだ(全国麦茶工業協同組合が説明している)。麦茶によく使われるのは六条大麦という品種で、国内では福井県あたりが主産地にあたる(麦茶 — Wikipediaに詳しい)。夜に飲んでも眠りを邪魔しないから、夏の作業机の脇に置きっぱなしにできる。私の仕事机の横には、年中なにかしらの飲み物があるが、夏のあいだはそれが麦茶のグラスになる。
余談だが、沸かした麦茶は冷ますのに少し時間がかかる。その「待っている時間」が嫌いではない。やかんの音が止まって、台所が静かになって、麦の匂いだけが残る。一年のうちで、その匂いを最初に嗅ぐ日が、私の夏の元日だ。
まとめ
夏は気温でも梅雨入りでもなく、麦茶のボトルが冷蔵庫に戻る日から始まる。沸かして、冷まして、入れる。手が覚えているその所作は、効率では説明できないし、説明する必要もない。
季節の支度は、たいてい飲み物のような小さなところから始まる。大きな宣言ではなく、台所の片隅の合図から。今年もボトルを洗った。これでようやく、夏だ。
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よくある質問
- 麦茶を水出しではなく沸かすのはなぜですか?
- 効率なら水出しが早いですが、やかんから立つ湯気と麦の香ばしい匂いがしないと夏が始まった気がしないからです。味の角が少し違うという気のせいのために、毎年沸かしています。理屈ではなく手の記憶です。
- 麦茶にカフェインは含まれていますか?
- 含まれていません。麦茶の原料は茶葉ではなく大麦という穀物のため、紅茶や緑茶と違ってカフェインを含みません。夜に飲んでも眠りを邪魔しないので、夏の作業机の脇に置きっぱなしにできます。
- 沸かした麦茶を冷水筒に入れるときの注意点はありますか?
- 熱いまま注がないことです。プラスチックの冷水筒に沸かしたてを入れると側面が白く曇り、冷蔵庫内まで結露します。鍋肌が手で触れる温度まで粗熱を取ってから移すと失敗しません。