Vol.042025年5月22日
Essay

雨の日の喫茶店、というだけで

雨の日に入る喫茶店だけが持っている、特有の静けさについて。窓に水滴が滑る音が聞こえる気がする。

SoraEndo · 2025年5月22日 · 1 min
SoSoraEndo2025年5月22日1 min341

雨の日の喫茶店には、晴れた日とは違う種類の静けさがある。

客の数は同じくらいでも、なぜか声が小さく感じる。コーヒーをかき混ぜる音や、店主が皿を重ねる音が、いつもより明瞭に聞こえる。

たぶん、外の音が雨に吸われているからだろう。普段は遠くで鳴っている自動車のエンジンや、人の話し声が、雨音に押し戻されて、店のなかの音だけが残る。


窓辺の席に座ると、ガラスを伝って降りる水滴が、一定のリズムで連なって落ちていく。水滴が落ちる音は、本当は聞こえないはずなのに、見ているうちに聞こえるような気がしてくる。

これは錯覚だけれど、悪くない錯覚だと思う。


雨の日に喫茶店に入ると、本も読まずに、ただ窓を見て、コーヒーが冷めるまで座っていることがある。

何も生産的なことはしていない。けれど、こういう時間が、書く仕事には必要だと思っている。書くために必要な、書かない時間。

Tags

Reaction

Share

X (Twitter)