Vol.042025年7月5日
Essay

古書店で見つけた、半分しか読まれていない本

神保町の古書店で買った本は、しおりが 142 ページに挟まったままだった。前の持ち主は、なぜここでやめたのか。

SoraEndo · 2025年7月5日 · 1 min
SoSoraEndo2025年7月5日1 min382

神保町の古書店で、ちょっと大きめの単行本を買った。

家に帰って包装をほどき、開いてみると、142 ページのところに細い革のしおりが挟まっていた。

前の持ち主は、たぶんここで読むのをやめた。


本は全部で 380 ページある。半分にも届いていない。なぜここでやめたのか、想像する。

生活が忙しくなったのか。話の展開が合わなかったのか。誰かに本を貸して、戻ってきたときには熱が冷めていたのか。

理由はもう分からない。けれど、しおりが挟まっていたという事実だけが、私のところに届いた。


私はそのしおりを取り出さずに、142 ページの少し前から読み始めた。前の持ち主が読んだはずの 141 ページまでを、彼/彼女と同じ順序で読み直してから、しおりを越えた。

しおりを越える瞬間、不思議な気持ちになった。誰かが諦めた本を、引き継いで読んでいる。それは古書という制度だけが許してくれる、小さな共謀のようなもの。


読み終わったその本は、また古書店に戻すつもりでいる。次の誰かのために、しおりは挟まずに。

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