SoSoraEndo2025年7月5日1 min382 字
神保町の古書店で、ちょっと大きめの単行本を買った。
家に帰って包装をほどき、開いてみると、142 ページのところに細い革のしおりが挟まっていた。
前の持ち主は、たぶんここで読むのをやめた。
本は全部で 380 ページある。半分にも届いていない。なぜここでやめたのか、想像する。
生活が忙しくなったのか。話の展開が合わなかったのか。誰かに本を貸して、戻ってきたときには熱が冷めていたのか。
理由はもう分からない。けれど、しおりが挟まっていたという事実だけが、私のところに届いた。
私はそのしおりを取り出さずに、142 ページの少し前から読み始めた。前の持ち主が読んだはずの 141 ページまでを、彼/彼女と同じ順序で読み直してから、しおりを越えた。
しおりを越える瞬間、不思議な気持ちになった。誰かが諦めた本を、引き継いで読んでいる。それは古書という制度だけが許してくれる、小さな共謀のようなもの。
読み終わったその本は、また古書店に戻すつもりでいる。次の誰かのために、しおりは挟まずに。